2018年2月16日
洋上風力発電
その課題と展望
日本は、四方を広大な海に囲まれた海洋国家です。この海洋上に風力発電システムを設置し、エネルギーを得るという試みが始められています。環境省の発表によりますと、洋上風力発電の導入ポテンシャルは、約16億kW(1,600GW)とされています。これは、年間稼働率を20%とした場合、年間発電量約2,800TWhに相当します。現在の日本の発電総容量(火力、水力、原子力などを含む)は、約2.5億kW(250GW)であり、年間総発電量は約1,000TWhとなっているため、洋上風力発電の持つ導入ポテンシャルの規模が非常に大きなものであることが分かります。
この導入ポテンシャルの内、どれほどの量を実際に利用できるかは、今後の技術革新によって変化します。仮に5%が利用可能になった場合の総出力は80GWとなり、年間発電量の約2割を賄うことが可能という試算になります。
海外の状況に目を向けると、特に欧州において、洋上風力発電はすでに飛躍的に導入量を増やしています。2017年度に新規に導入された洋上風力システムは約3GW、累計では16GWに達しています。風力全体では、2017年度の新規導入は約16GWとなり、過去最高を更新しました。これにより、欧州における累計風力発電容量は170GWに達しました。
これには欧州政府の政策により、十分なサポート体制が取られていることにも関係があります。すでに発送電分離がなされていることもあり(日本では2020年4月から)、送電業者が自らイニシアチブをとって、新エネルギーの導入に参画することができることも特筆されます。また、ガソリン自動車の販売禁止政策(ドイツにおいては2030年以降、フランスでは2040年以降など)を主導して、運輸部門の電化を推進することで(充電スタンドの設置など)、さらに多くの再エネ発電施設の建設を促進しようとしています。
日本における洋上風力発電の導入には、ヨーロッパで培われた技術に加えて、日本近海の海流の特性(うねりの強さなど)また台風などの不安定な気候についての対策が求められます。また海上における占有権の問題など、法整備が必要とされる課題もあります。ヨーロッパでは、政府が海洋上の開発区域をあらかじめ設定し、必要な認可などを取得した上で、入札により発電事業者を選定する、所謂「セントラル方式」により、これまで多くの実績を上げてきました。このような制度により、技術的課題克服への取り組みに専念できる環境を作ることも、洋上風力発電導入の促進には必要です。再生可能エネルギーの導入に関する国を挙げてのコンセンサスの形成が、最も重要な要素となります。