山林、耕作地の利活用に向けて
豊かな国家は、整備の行き届いた美しい地方社会によって支えられています。それは地方社会が、国家の基盤である一次産業(特に農業)の舞台であるからです。
我が国の一次産業を取り巻く状況は、海外のその他の国々(アメリカ、中国、フランスなど)とは大きく異なっています。平地が多く、農業の集約化が容易な地域と比べ、日本の国土の可住地面積は少なく、その大部分は山地に囲まれています。農地と山地の距離が近いという特性は、日本においては、農地の整備と山地の整備が密接に関わっていることを意味しています。
近年、特にこの山地の整備の問題が大きく取り上げられています。 我が国の農地に近接する山林の多くは、従来、建材供給産業用としてではなく、薪炭林や原野(茅、ススキなど)として、地元のエネルギー供給源として利用されていたという経緯があります。戦後の第三次エネルギー革命(石油への転換)により、このような農地近接の山林は、エネルギー供給源としての役割を失い、戦後の木材需要の高まりを受けた造林拡大政策により、急速にスギ・ヒノキなどの建材用樹木に転換されてきました。しかし、輸入木材に比べて価格競争力が劣ることから、その多くは放置され、現在に至っています。このような山地は、日本の人工林の約半数、約500万平方メートルに達するとされています。
出典:国土交通省、国土交通白書2014
このように、我が国においては、農地整備を行い、地方社会を豊かに保つためには、近接の森林整備を欠かすことはできません。現状として、この森林整備が停滞し、森林荒廃が進行していることは、我が国の地方社会を疲弊させ、一次産業を弱体化させ、国全体の経済にまで深刻な影響を与えています。
地方創生を成し遂げ、国全体の経済を健全化するためには、このような放置森林の再整備問題は、避けることはできない課題となっています。